第44回日本臨床心理学会大会(徳島)のご案内
大会委員長 樫田 美雄(徳島大学)
本年の大会長を引き受けました樫田美雄と申します。11年前から徳島におります。徳島は、山も海もあるよい所で、食べ物もおいしいです。「地方だと、名物にうまいものあり、といえる」。これが、私が徳島に来ての最初の感想でした。スダチは、お刺身用だけでなく、寿司酢にもなりますし、味噌汁にも絞ります。うどんは、さぬき系のこしの強いものが味わえます。「楽天」にも出店している八万町の「おおさかや」は地酒専門店ですが、特級品のわかめも扱っていて秀逸です。9月ならあちこちで「鳴門金時」を箱で売っています。そもそも、普通のスーパーで売っている生ワカメやアジが、十分においしいです。徳島といえば、「お遍路」と「阿波踊り」以外は、「眉山」が映画タイトルになったためにちょっと知られている位で、他のものはあまり知られていませんが、食べ物・見物等、いろいろあります。是非、この機会にご来徳下さって、存分に楽しんでいってください。
大会会場(徳島大学常三島キャンパス)は、徳島市の市街地にありますから、駅前のホテルからでも、バスで10分の道のりです。徳島大学には本学会の会員は2名おります。2名はともに「社会学研究者」ですが、いずれも、精神保健や発達障害に強い関心を持っております。今回の大会を機に、地域の臨床心理関係の諸機関と連携を深めていきたいとも考えておりますので、地域見学会等のご希望がありましたら、ご意見を電子メールでお寄せ下さい(樫田:kashida@ias.tokushima-u.ac.jp)。検討いたします。〝日本臨床心理学会は、絶えず「社会との関係」での「臨床心理学」を考えてきました〝と、昨年の藤本豊大会長が大会案内チラシに書いていらっしゃいました。医療観察法も特別支援教育も社会的な問題と深く関わっています。これらの問題を、社会学者も心理学者も医者もユーザーもユーザーの家族も、ともに参加して議論できるところに、本学会のよさがあると思っております。その良さを実践し、伸ばしていく大会にしていきたいと思っています。
本大会最終日(9月20日)の午後には、全体会として「シンポジウム:特別支援教育と発達障害-その構造と論理の批判的検討-」の開催を予定しています。このシンポジウムは、「発達障害」に関わる諸事象を、当事者を含む4パネリストの発題で考える、という企画です。本学会らしい企画であると自負していますので、どうか皆様、ふるってご参加のうえ、活発な討論をよろしくお願いいたします。
日時:2008年9月18日(木)~20日(土)
場所:徳島大学工学部キャンパス内 新・共通講義棟5階・6階(徳島県徳島市南常三島町2-1)
9/18 13:30 受付開始 |
14:00-15:30 事務総会
15:30-17:30 総会報告
9/19
(金)9:30 受付開始
10:00-12:30 ●個別発表 A・B・C13:30-16:30 ●分科会Ⅰ 早期・発達療育と児童デイサービス事業のあり方
●学習会 医療観察法の現状と問題 情報交換会9/20
(土)9:00 受付開始
9:30-12:30 ●分科会Ⅱ 地域支援と臨床心理PartⅡ
●ワークショップ ヒアリング・ヴォイシズ13:30-16:30 ●地域貢献特別公開シンポジウム
特別支援教育と発達障害 -その構造と論理の批判的検討-
【地域貢献特別公開シンポジウム】
日本臨床心理学会 文科省科研「特別支援教育のビデオエスノグラフィー」合同開催
【大会参加費】会員3,500円 非会員4,000円 ユーザー・学生2,000円
【情報交換会】4,000円
【地域貢献特別公開シンポジウムのみ参加の非会員】500円(資料代)
○徒歩の場合:徳島駅より徒歩30分
○バス利用の場合:徳島駅より10分
徳島駅より徳島市営バス「島田石橋」行、「商業高校」行に乗車し、「助任橋」又は「徳島大学前」下車、徒歩5分
○大会会場:工学部キャンパス内・新・共通講義棟5階・6階
(大会受付:5階エレベーターホール前)
○情報交換会会場:工業会館2階「セミナー室」
【宿泊について】
徳島市内では本大会と同じ会期で、他の学会の開催が予定されています。 そのため大会間近
での宿泊や交通機関等の混雑が予想されます。
本大会に参加予定の方は、早めの宿泊予約・フライト予約をお勧めします。
宿泊先は「徳島コンベンションビューロー」
(Tel:088-652-8814)の宿泊案内などをご利用下さい。会場付近の宿泊施設は、プラザイン徳島、徳島グリーンホテルなどです。
なお、学会事務局での宿泊先斡旋はしておりませんのでご了承下さい。
【台風の際の対応】
状況によってプログラムの部分中止の可能性があります。詳しい情報は、学会事務局留守番電話、もしくは徳島大学総合科学部人間社会学科地域システムコース・地域社会サブコースサイト内のHPで、常時、公開いたします。
<大会プログラム>
☆総会報告 臨床心理職国家資格化について
9月18日(木)3:30p.m.~5:30p.m. 【5階・502教室】
話題提供者:藤本 豊(日本臨床心理学会運営委員)
心理の国家資格化は未だに目処が立っていません。2005年3月に「医療心理師」が国家資格として成立する所まで進みましたが、臨床心理士国家資格化をめざす「臨床心理職の国家資格化を通じ国民の心のケアの充実を目指す議員懇談会」が2005年4月に発足し、7月に「医療心理師法」「臨床心理士法」の二法案を無理矢理一本化した「臨床心理士及び医療心理師法案」が出されました。しかし、医療関係団体を含め「臨床心理士法」の部分を認めることが出来ないとの反対声明が出される中で、頓挫し現在に至っています。2008年4月には日本学術会議から「学士課程における心理学教育の質的向上とキャリアパス確立に向けて」が公表され、「職能心理士」としての国家資格化が提言されました。また、日本心理学諸学会連合の「心理学検定」が、今年からスタートしました。
当日は、資格化の最新情報をお伝えし、会員諸氏と議論を深めたいと考えております。
☆個別発表
9月19日(金)10:00a.m.~12:30p.m. 【5階・503教室、504教室、505教室】
A.中学校卒業後を展望した適応指導教室(教育支援センター)の実践課題 ―自我形成の視点からの支援プログラムの点検―・・・・・・・・・・・菅野 聖子
軽度発達障害者支援のあり方についての一考察 ―ある専門学校における取組みを通して-・・・・・・・・・・・・・・波多野大介
B.「最重度」知的障害のある人のグループホーム入居決定要因に関する一考察 ―3家族の親へのインタビュー調査を通して―・・・・・・・・・・・・谷奥 克己
禅仏教における自我形成援助方略 3 一参禅の意義― ・・・・・・・・・・・・・・・吉田 昭久
C.スペシャリストと体験者のスペシャリストとの関わり合い ―ヒアリング・ヴォイシズ運動にみる援助者と非援助者の関わり合い― ・・・・・・中恵真理子
正常と異常についての基準―何を以って異常と見なすか、その基準を探る― ・・・・・・武藤 麻美
☆分科会Ⅰ 早期・発達療育と児童デイサービス事業のあり方
9月19日(金)1:30p.m.~4:30p.m. 【5階・503教室】
発題者:亀口 公一(NPO法人アジール舎 児童デイころぽっくる) 椎野 広久(NPO法人こどもの発達研究室きりん) 渡辺三知雄(乙訓ポニーの学校)
本学会では、1980年、第16回大会でシンポジユウム「『障害児』の早期発見・早期療育をめぐって」を開催し、1987年には、本学会編著「『早期発見・治療』はなぜ問題か(現代書館)」を出版しています。その中で、「早期発見・治療」が、「障害児者」の存在を否定する可能性を指摘しています。しかし、約30年後の現在、時代状況は大きく変化しています。戦後の医療、教育、福祉の諸制度は介護保険法、障害者自立支援法、発達障害者支援法等によって再編され、「する側-される側」の関係性にも大きな変化をもたらしています。今回、分科会の進行は亀口が行い、合わせて今年4月開業した「児童デイころぽっくる」に関する発題も兼ねます。椎野さんには、大会開催地の徳島で実践されているNPO法人による早期発見、発達支援の活動を紹介していただき、渡辺さんには障害者自立支援法に取り込まれた児童デイサービス事業の問題点を検討していただきます。
改めて現在の少子高齢化社会、情報化社会の中で、「障害とは何か」「発達支援とは何か」を考えてみたいと思います。
☆学習会 医療観察法の現状と問題―医療観察法は本当に必要か 矛盾だらけの法と現実―
9月19日(金)1:30p.m.~4:30p.m. 【5階・504教室】
講師:李マリジャ(光愛病院・医療観察法.NET 制作委員)
医療観察法が施行され3年が経過し、様々な問題が浮き上がってきました。その中には、指定入院医療機関を退院し通院処遇となるものが、居住地から通院できる指定通院医療機関がないために居住地にある精神科に通院して処遇終了となった例。それとは逆に、近くに指定通院医療機関がないために入院継続となった例。また、逮捕・釈放後半年近く経過してからの医療観察法の申し立てで鑑定入院となり保護室に隔離された例などがあります。
これらを見ると、本当に医療観察法が必要なのか?と考えてしまいます。本学習会では、医療観察法の成立当初から鋭く問題を指摘し続けている李マリジャさんに講師をお願いしました。李さんから医療観察法についての解説の後、それぞれの現場で生じている問題点についての意見交換と討論ができればと考えております。
☆分科会Ⅱ 地域支援と臨床心理PARTⅡ-関係機関との連携からー
9月20日(土) 9:30a.m.~12:30p.m. 【5階・503教室】
発 題 者:渡辺三知雄(乙訓ポニーの学校)
髙島 眞澄(〔社福〕光風会生活支援センター「風(FOO)」)
昨年、「地域支援と臨床心理」の分科会では、地域支援における「臨床心理」を担う者としての具体的実践・役割とは何かについて、精神障害者の地域活動支援センターや援護寮での具体的な取組みをとおして検討しました。議論の中では、精神障害者の生きるペースや障害者独自の認識の仕方を尊重し合える「居場所」が、地域支援には重要であること。その中で、臨床心理の関わりが、精神障害者同士が「自ず」から語り出すような関係性や、当り前に地域で生きる上での「社会性」を育む関係性をつくり出していることを確認しました。
今回は、地域支援には不可欠な関係機関との連携のあり方をとおして、「臨床心理」の実践・役割について検討していきます。連携のあり方は、援助・支援の「質」や「量」として具体的に現れ、障害児・者の生き方に影響を及ぼします。それは、障害児・者が施設や精神科病院に「隔離・収容」「抱え込み」されているといった人権侵害が未だに続いていることに如実に現れています。私たちは、「障害」をどのように捉え、援助・支援の内容を共有するか。療育現場と精神障害者の地域支援現場からの報告を踏まえて、みなさんと議論を進めたいと思います。
☆ワークショップ ヒアリング・ヴォイシズ(HV)―解説と映画「キチガイの一日」上映-
9月20日(土) 9:30a.m.~12:30p.m. 【5階・504教室】
解説と進行:佐藤和喜雄(福祉会菩提樹) 宮本昌子(目白大学)
語り:吉澤 毅(上記映画主演、声体験者)山本 明子(上記映画監督、こらーる岡山)
他の人には聞こえない声に怯えたりするのは病気だと考え、「聞こえ」を向精神薬で抑えようとするのが一般的精神医療です。しかし多くの人が声の苦しみ・薬の副作用から容易に解放されません。ヒアリング・ヴォイシズは、声が聞こえる体験に耳を傾け、声による困難への対処を体験者と支援者が学びあい、さらに声にまつわる情緒的・社会的な状況を探求して、その人らしい生き方を求めようとする方法と理念です。ワークショップでは、ヒアリング・ヴォイシズの基本的解説に続いて、映画「キチガイの一日」を鑑賞し、主演の吉澤さんと監督の山本さんが語ります。吉澤さんは声に生活をかき乱されて精神科医にかかる体験をしながら、出会いを通して人生を探求し…。山本さんはある日「映画を撮れ」と声が聞こえて驚き悩みつつも映画を撮り始めた…。フロアに参加の声体験者をはじめ参加者多数との交流を期待します。
映画「キチガイの一日」パンフレット
地域貢献特別公開シンポジウム 特別支援教育と発達障害―その構造と論理の批判的検討―
(日本臨床心理学会 文科省科研「特別支援教育のビデオエスノグラフィー」合同開催)
9月20日(土) 1:30p.m.~4:30p.m. 【6階・創成学習スタジオ】
発 題 者:高森 明(アスペルガー当事者 氏家 靖浩(東北文化学園大学) 山本 智子(奈良女子大学) 山本真由美(徳島大学)
司 会:樫田 美雄(徳島大学)
「特別支援教育」は、昨春(2007年4月)から正式に実施された新しい学校教育の形です。本シンポジウム(特別支援教育と発達障害)は、好意的に受け取られることが多い、この新しい取り組みに関して、あえて批判的に、かつ、臨床心理学会的に根源的に、考えることを志向して企画されました。以下簡単に、その企画の枠組みを解説いたします。
上述の「特別支援教育」に対する批判には、「現実批判」と「理念批判」の2種類がありうると樫田は考えています。前者は「理念はよいが、現実=予算、準備、資格制度等=が不十分である」という言い方になるでしょう。この重要な論点については、今回のパネリストでは、第2報告の氏家さんが十分な問題意識をもって触れてくれる手はずになっています。けれども、もう一種類の批判の形があり得ます。「理念そのものへの批判」です。具体的には、「特別支援教育がよって立つ理念そのもの=例えば<共生>=に問題がある」という批判の形になるでしょう。こちらの論点については、今回のパネリストでは、第1報告の高森さんが、アスペルガー当事者としての立場から論じて下さる手はずになっています。
ところで、じつは、この2種類の批判は、画然と区別できるものではないようにも思われます。現実は複雑で、理念はその複雑な現実の中で様々な予想外の振る舞いをするものだからです。たとえば、「当事者」といっても一枚岩ではありません。<共生>を希望している当事者もいるでしょう。<障害者家族>と<障害者>の<社会参加イメージ>が食い違っている場合もあるでしょう。どのような理念的立場に立つにせよ、具体的事例のなかで理念の現れを点検する必要があります。第3報告と第4報告は、この作業のための素材として、有意義なものになるはずです。山本智子さんの第3報告は、統合的アプローチについて、なされます。山本真由美さんの第4報告は、徳島県の場合について、の報告です。
さいごに、司会者から会員の皆さんにお願いがあります。今回のシンポジウムでは、視点の多様性が重要になります。どうぞ積極的な参加と発言を宜しくお願いします。皆さんと一緒に、このシンポジウムを、特別支援教育検討史に画期をなすものにしていきたく思っています。
地域貢献特別公開シンポジウム
イベント名: | 第44回日本心理学会 徳島大会 地域貢献特別公開シンポジウム 「特別支援教育と発達障害-その構造と論理の批判的検討-」 |
登壇者及び演題: | 高森 明氏 (アスペルガー当事者、『アスペルガー当事者が語る特別支援教育』著者) 「<人間としての承認><共生><理解><支援><社会参加>は支援者が望んでいること?:アブノーマライゼーションのすすめ」氏家 靖浩氏(東北文化学園大学教員) 「なぜ誰も専門職養成を問わないのか? -障害に関する心理学・福祉学担当者の不安-」 山本 智子氏 |
日時: | 9月20日(土曜日)13時30分から16時30分まで |
場所: | 徳島大学常三島キャンパス 共通講義棟6階 創成学習スタジオ |
司会: | 樫田 美雄(徳島大学) |
参加費: | 500円(資料代として) ただし、日本臨床心理学会非会員の方で、シンポジウムのみご参加の方のみ |
申込方法: | 電子メールまたはファクシミリにて (申込みメールアドレス等の詳細は下記ポスターへ) |
申込締切日: | 平成20年9月18日(木曜日)15時まで |
徳島大学総合科学部 樫田 美雄 |