PDFファイル 第46回東京大会
第46回東京大会
第46回日本臨床心理学会大会(東京)へのご案内
大会委員長 高橋 晶子(錦糸町カウンセリングルーム)
今年の大会は、会員の自主的な参加が多い大会となりました。1日目午前の個別発表は計9件の応募があり、ここ数年の大会の中では一番多い数となりました。また1日目午後には会員による自主企画「デイケアのちょっといい話し」も催されます。会員の皆さんのこうした形での大会参加の増加は、会員と共に作る学会を感じる、良い機会となります。当日は皆さんが日頃行っている地道な臨床実践報告や、長年追い続けているテーマなどを、発表者の人となりを含めながらお聞きし、会員相互の交流を楽しみたいと思います。
運営委員会主催のラウンドテーブルは、「医療観察法での治療を問う」や、「心の癒しを沖縄の相談関係に学ぶ」など、様々な角度から「心理療法・治療」について検討する場を設けました。いずれも現実の「場」で起きている現象をどのように捉えるか、多角的に検討していければと思います。
2日目午前は、昨年発行した当学会編の『地域臨床心理学』と、この秋発行予定の『幻聴の世界』(いずれも中央法規出版)の内容を元に、更なる議論の深まりを目指すセッションを企画しました。どちらも地道な臨床実践の中から見出された見解をまとめたもので、臨床に携わる人はもとより関係者の方々にとっても有意義な内容と考えています。書き下ろしのこれらの書籍を元に、より深い議論が展開していければと思います。
2日目午後の全体会パネルディスカッションは少し趣を変え、やや抽象的で幅の広いテーマでの企画を立てました。内容はパネラーの皆さんそれぞれの人となり(個人史)をベースに、ユーザーとの間で展開された臨床実践の中から見出された「理論のエッセンス」を語って頂きます。その話しを通して「臨床実践の理論は、机上の学びからではなく、臨床家が自らの人生の流れの中で選択されていくものであり、それは出会うユーザーの方と共に展開しながら、最終的には臨床家自身のスタンスを確立していくものである」ということを、フロアの皆さん一人ひとりに感じていただければと思います。そして臨床活動の有り方を再確認・再検討することを通して、明日への力が見いだされていければと思います。
初秋の東京代々木での大会、参加された皆様一人ひとりにとって実り多き会となることを期待したいと思います。どうぞ皆様お誘いあわせの上、秋のよき日を共に過ごしましょう。
日時:2010年9月25日(土)~26日(日)
場所:国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区代々木神園町3番1号)
午 前 | 午 後 | 夜 | |
9/25(土) | 8:30 受付【センター棟509室】 9:00~10:00 定期総会 10:10~12;00個別発表 A: 山岸竜治、松岡倫子・原千恵子 B: 村松健司、滝野功久 C: 藤澤三佳、有留照周 D: 太田裕一、氏家靖浩・森谷就慶・ 佐藤俊彦、亀口公一 |
1:30~4:30 ラウンドテーブルディスカッション Ⅰ.医療観察法での治療を問う ― 強制構造の中での治療の意味 ― Ⅱ.心の癒しを沖縄の相談関係に学ぶ - うぶすなの神、拝み、唄 ― 自主企画 ・デイケアのちょっといい話 企画者:百田 功 |
5:00~7:00情 報 交換会 |
9/26(日) | 8:30 受付【センター棟509室】 9:00~12:00 パネルディスカッション ・『幻聴の世界』出版を記念して 声がきこえる体験を多角的にみる ラウンドテーブルディスカッション Ⅲ.『地域臨床心理学』を読む ―「第3章」心理的視点からの 生活支援を考える― |
12:40 受付【センター棟413室前】 1:00~4:45 全体会パネルディスカッション ・臨床心理学の理論と実践 ―臨床の場における関係性と、 様々な臨床スタンスを超えてー パネリスト:丸田俊彦 (メイヨ・クリニック医科大学 精神科名誉教授) 岡村達也(文教大学) 宮脇 稔 (ナカノ*花クリニック ) 指定討論者:島薗 進 (東京大学) |
※本大会はどなたでも参加できます。なお、今回は会場の都合で、原則事前登録となります。
登録方法は2頁をご覧ください。
<大会参加費>【郵便振込】会員:4,500円 非会員:5,000円 学生、ユーザー・家族:2,000円
【当日払い】会員:5,000円 非会員:5,500円 学生、ユーザー・家族:2,500円
<全体会パネルディスカッションのみの参加>【郵便振込】1,000円 【当日払い】1,500円
<情報交換会> 【郵便振込】4,000円 【当日払い】4,000円
【日本臨床心理学会事務局】〒110-0003 台東区根岸1-1-24 鶯谷日伸ハイツ201
TEL&FAX 03-3847-9164 (電話は木曜日10:00~16:00のみ。他、留守電対応)
学会HP:http://www.geocities.jp/nichirinshin/ e-mail:nichirinshin@yahoo.co.jp
【会場までの交通案内と周辺地図】 【最寄駅から会場までの地図】
【JR東京駅より電車利用の場合】
JR中央線下り方面に乗り新宿駅で下車。西口にある小田急電鉄新宿駅地下1階⑦⑧番線から各駅停車に
乗り換え約3分、参宮橋駅下車、徒歩7分
【食事について】
会場には4つのレストランがあります。また会場周辺には数件の飲食店があります。会場内での飲食は全面禁止となっておりますので、これらの施設をご利用下さい。
【宿泊について】
学会事務局では会場までの移動や宿泊先のあっせんはしておりませんので、各自でご予約下さい。
【開催に支障のある不測の事態・自然災害について】
状況によってプログラムの部分中止の可能性があります。詳しい情報は、学会事務局留守番電話、もしくは学会HPで常時、公開いたします。
【事前登録について】
今年度の大会は会場の都合上、事前登録をお願いすることになりました。氏名、住所等連絡先を明記の上、9月17日(金)までに下記のいずれかの方法で登録をお願いします。
①郵便振込みでの登録:通信欄に会員の種別、参加内容、あればEメールアドレスをご記入ください。
②Eメールでの登録:nichirinshin@yahoo.co.jp
③Faxでの登録:03-3847-9164
④郵送での登録:〒110-0003
台東区根岸1-1-24 鶯谷日伸ハイツ201 日本臨床心理学会
☆記載内容:<氏名(フリガナ)、住所:電話番号(FAX番号)もしくはEメールアドレス)>
<会員の種別:会員/非会員/学生/当事者・家族>
<参加内容:大会/全体パネルディスカッションのみ/情報交換会>
☆②~④の場合は、登録後次の郵貯銀行振込口座に必要な金額を振り込んでください。
口座番号:00140-2-425522 ☆加入者:日臨心
【諸注意】
①事前振込み後の参加費の返金は出来ませんので、ご了承ください。
②登録完了後、郵便振込で参加費をお支払い頂いていない方は、当日払いの金額を受付でお支払い頂くことになります。
<大会プログラム>
9月25日(土)9:00a.m.~10:00a.m. 定期総会 【センター棟510室】
9月25日(土)10:10a.m.~12:00a.m. 個別発表 【センター棟413・510・512・514室】
A:ひきこもり研究の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・山岸 竜治
セクシャルマイノリティ(性的少数者)の受容過程に関する一考察・・・・・・・松岡 倫子、原千恵子
B:入所施設における高校生グループの活動について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・村松 健司
臨床心理の専門家を養成するということ - 教育現場の諸問題から考える -・・・・・・・滝野 功久
C:精神病院における「自己表現」としての絵画活動
― H精神病院における絵画活動の事例より ー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・藤澤 三佳
発癌理論と治療並びに予防法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・有留 照周
D:臨床フィールドとしての大学キャンパス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・太田 裕一
不登校の家族支援を問う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・氏家 靖浩、森谷就慶、佐藤俊彦
子どもの心理発達と感情コントロール ― 発達臨床の現場から -・・・・・・・・・・・・亀口 公一
9月25日(土)1:30p.m.~4:30p.m. ラウンドテーブル・ディスカッションⅠ 【センター棟109室】
医療観察法での治療を問う ― 強制構造の中での治療の意味 ―
企 画 者:藤本 豊(東京都立中部総合精神保健福祉センター)
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下医療観察法)が施行されて5年を経た現在、様々な課題が浮かび上がっている。
医療観察法の指定入院医療機関では、「社会復帰」に向けての各種の心理教育プログラムが実施されている。プログラムは処遇計画で本人合意のもとで作成しており、参加の強制はないとしている。しかし、参加を拒否することは治療を拒否することであり、病状が良くないと考えられ退院できない構造にある。こうした強制治療構造での「治療プログラム」について議論をしたいと考えている。
当日は、実際の治療を受けた対象者の家族の方の参加も予定している。皆様の参加をお待ちします。
9月25日(土)1:30p.m.~4:30p.m. ラウンドテーブル・ディスカッションⅡ 【センター棟514室】
心の癒しを沖縄の相談関係に学ぶ - うぶすなの神、拝み、唄 ―
企 画 者:實川 幹朗(姫路獨協大学)
話題提供者:佐藤 壮広(明治大学大学院情報コミュニケーション研究科、他)
臨床心理学は「心の癒やし」を業とします。これは人類史からは<祀り>の一部です。わが国の臨床心理学はほとんどが西欧起源で、心理的風土が異なる利用者を戸惑わせます。近代心理学の差別的、抑圧的な性格も反省しなければなりません。この企画では、沖縄の土着信仰を研究する人類学者を招きます。沖縄には、古い魂の癒やしが今も生きていますし、「正常」の幅が広く取られます。また「ユタ」と呼ばれる伝統的な治療者は、社会的には権威がありません。クライエントは判定や助言を一方的に「される」者ではなく、「判じ」の妥当性を厳しく評定します。なお発題者は、ギターを爪弾き「非常勤ブルース」を熱唱する「歌う人類学者」でもあります。
9月25日(土)1:30p.m.~4:30p.m. 自主企画 【センター棟510室】
デイケアのちょっといい話
企 画 者:百田 功 (浅香山病院)
発 題 者:山﨑 勢津子(浅香山病院)ほか
メインテーマ(プログラム運営や治療論)とは別の”現場で働くデイケアスタッフならではの実感ややりがい、悩みというもの”があって、それらはささやかであるがゆえに学会や本などで大っぴらに取り上げられていない(または取り上げにくい)というのが現状です。そういったことについて、当日は現場のスタッフで話し合えるような内容にしたいと考えています。このような趣旨に賛同していただける方々の参加をお待ちしています。
9月25日(土)5:00p.m.~7:00p.m. 情報交換会 【D棟9階 レストランさくら】
9月26日(日)9:00a.m.~12:00a.m. パネルディスカッション 【センター棟514室】
<『幻聴』(仮題)出版を記念して> 声がきこえる体験を多角的にみる
パネリスト:朝田 隆 (筑波大学臨床医学系精神医学)
佐藤 和喜雄(NPO福祉会菩提樹)(企画コーディネーター)
松王 強 (ヒアリング・ヴォイシズ研究会)
人がそこに居なくても「声がきこえる」現象/体験は、精神医学では「幻聴」という症状として、薬物療法で対処しようとします。一方ヒアリング・ヴォイシズでは、これを本人の体験として重視し、「声」への対処とその意味を生活状況の中から探り、新しい生き方を探求します。「声」にかき乱されるだけでなく、「声」から学ぶ人もあり、また古代より、「声」を神の啓示として受け、社会的に価値ある行動に導かれた場合もあります。
本学会編『幻聴』の執筆者3名が、この現象/体験をどうとらえていくかをそれぞれの視点で提示します。これを受け、どのような対処やサポートが導かれるのかについて、フロアと共に討論したいと考えます。
9月26日(日)9:00a.m.~12:00a.m. ラウンドテーブル・ディスカッションⅢ 【センター棟512室】
『地域臨床心理学』を読む -「第3章」心理的視点からの生活支援を考える ―
企 画:日本臨床心理学会研修委員会
発 題 者:高島 真澄(社会福祉法人光風会)
コメンテーター:栗原 毅 (世田谷区北沢保健福祉センター)
~ ホームヘルパーが行くと、彼女の居間の隅には、必ず布団が敷いてあります・・・そのとき何をすべきか ~
人間は同じ対象物を前にしても一人ひとり「見ているもの」が違い、同じ音楽を聞いても「聞いているもの」は異なる、これは心理学の「知覚」の課題です。ものごとの受けとり、理解等の「認知・認識」も当然異なり、異なる社会環境、生活状況の中で様々な感情や思いを抱きながら日々を生きています。当学会は、こうした一人ひとり異なる’ユーザーのくらし’の視点を大切にした地域生活支援について、『地域臨床心理学』を昨年出版しました。今回は第3章の執筆者の高島さんに、「ユーザー協働の社会資源調査活動」への支援、ピアサポーターによる精神科病院内での「お茶飲み会」といった活動実践の現状を語ってもらい、参加者と自由に意見交換しつつ、「ユーザーの心理的視点を踏まえた地域生活支援」について考えたいと思っています。
9月26日(日)1:00p.m.~4:45p.m. 全体会パネルディスカッション【センター棟417室セミナーホール】
臨床心理学の理論と実践 ― 臨床の場における関係性と、様々な臨床スタンスを超えて -
パネリスト:丸田 俊彦(メイヨ・クリニック医科大学精神科名誉教授)
岡村 達也(文教大学)
宮脇 稔 (ナカノ*花クリニック)
指定討論者:島薗 進 (東京大学)
司 会:高橋 晶子(錦糸町カウンセリングルーム)
實川 幹朗(姫路獨協大学)
現在、世界には数百種類に及ぶ臨床心理学の理論や技法があります。これら無数にある理論や技法の中から、私たちはどのようにして自らの立場を選び、学び、自らの臨床スタンスを作り上げているのでしょう。また、立場が異なるにもかかわらず、優れた臨床家なら流派を問わずに臨床活動の成果が上がるのは何故なのでしょう。このような臨床活動の中で、理論と技法はどのように働いているのでしょう。
今大会の全体会では、長年臨床活動を行ってきた3名の臨床家に、それぞれの臨床スタンスに至る個人史を語って頂きます。そしてお三方が支持される理論や技法のうち、「クライエント/ユーザー/当事者/される側」との「関係性」をめぐる部分が、臨床活動にどのように生かされているかを主軸に、お話し頂きます。それにより、それぞれの臨床活動の共通点や相違点はどのようなものか、また、それぞれの臨床スタンスの違いが「クライエント/ユーザー/当事者/される側」との「関係性」にどのような影響を及ぼすのかなどについて、検討したいと思います。
一方、このように無数に広がる臨床心理学の理論や技法は、ややもすると立場の違う者同士の対立につながり、互いの非難・攻撃をも招きかねません。また、「○○療法を行うことが臨床家の仕事である。故にその理論と技法さえ身につければ、専門家になれる」といった、マニュアル的な発想にもつながりかねません。このような現象は、心の癒しを求める宗教の世界における、様々な宗派が乱立している現象と非常に似通っています。このような現象をどのように捉えれば良いのか。いかにしたら互いの対立やマニュアル化を避け、諸流派を協調、発展させることが出来るのか。このあたりを、宗教の研究者からご助言頂きます。そこから、臨床心理学の新たな展開が見いだされていければと思います。
参加者一人ひとりにとってこの全体会が、臨床活動の有り方を再確認・再検討する機会となり、「クライエント/ユーザー/当事者/される側」にとってより良い臨床活動を行う助けとなることを期待します。