第42回日本臨床心理学会大会(姫路)

第42回日本臨床心理学会大会(姫路)へのご案内

―どなたでもご自由にご参加下さい-
大会委員長 亀口 公一(乙訓若竹苑)

暑い日が続きます。本学会に関心を寄せる皆様、如何お過ごしでしょうか。今回、私の暑く寝苦しい夏の夜の夢がみごと的中し、初めて大会委員長の大役をお引き受けすることになりました。つきましては、ご挨拶を兼ねて歴史ある本学会大会へのご案内を申し上げます。
本大会は1964年の学会創設以来42回目の年次大会となりますが、人間のライフサイクルで言えば最も充実した年齢であり、変化の激しい年代でもあります。この42年間、臨床心理学が抱えた諸課題の深さは、本学会が経験した二度の自己変革の危機によって、如実に物語られております。
また、本学会は35年前、心理学の良心(Conscience)を当事者から鋭く問われ、その後、1・心理職にとって必要な資格とは何か、2・「する側-される側」の関係性から逃げることなくどう真摯に向き合うか、を問い続けてきました。しかし、残念なことに若い研究者や学生にはほとんど知らされていません。今や「する側」の専門家が自らの居場所を求めて自分探しをしている時代でもあります。
今回、「人間の諸問題をすべて個人の内面に還元する心理主義」を主要なテーマにして、充実したプログラムができました。特に「心理学分野の国家資格」、「私という病」、「虐待家族へのまなざし」など臨床心理学が避けて通れない問題や「障害者自立支援法と心理支援」など社会的にタイムリーな企画も用意されています。参加者とともに学びたいと思います。
なお、本大会は、会場提供を仲介していただきました会員の實川さん始め、姫路獨協大学と姫路観光コンベンションビューローの多大なご協力で開催することができました。この場をお借りして改めてお礼申し上げます。その結果、一人でも多くの方が参加しやすくなるように、第1報でお知らせした参加費をさらに低額に変更することにしました。変更のお詫びとともに関係者への周知をよろしくお願いします。
自由な競争によって個人や専門に分断され生きにくい世の中ですが、本学会はどなたでも参加できます。秋の一日、姫路城から天下を眺めるこころのゆとりを求めて多くの方々がご参加されますよう心よりお待ち申し上げます。
日時:2006年10月27日(金)~28日(土)
場所:姫路獨協大学(兵庫県姫路市上大野7-2-1)

午   前

午   後

夕 べ

10/27

(金)

9:30~12:00個別発表A個別発表B 1:00~2:00 定期総会2:00~3:30総会討議「国家資格について」 3:45~5:45自主企画 6:30~8:30懇親会
10/28 

(土)

9:30~12:30分科会I医療における心理支援を考える分科会II「DV・児童虐待」家族を見るまなざし 1:30~4:30全体会シンポジュウム現代社会の心理主義化を問う

大会参加費 会員3500円 非会員4000円 学生・当事者2000円
懇親会参加費   4000円
事前振込登録先(金額は同じです。振込後のキャンセル・返金は出来ませんので、ご注意ください。)
<郵便振替口座:00150-6-371927 加入者名:日本臨床心理学会大会・研修口座>
日本臨床心理学会事務局
〒192-0064八王子市田町4-4  tel&fax 042ー624-1615(電話は月曜日のみです)
e-mail:nichirinshin@yahoo.co.jp  HP: http://www.geocities.jp/nichirinshin/

個別発表A (西館会議室1)

10月27日(金)9:30a.m.~12:00a.m.
インターンシップとして精神保健福祉センターに入って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・堀田 翼
京都DARCにおける薬物依存症者支援について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・波多野大介
身体症状を抱えるクライアントへの臨床心理的支援II
―身体疾患・障害とその周辺を巡って―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・目加田敏浩
個別発表B (西館会議室4)
子どもの個性と不登校―軽度発達障害を巡って―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高橋 晶子
心理専門職が教育現場に入っていくとき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・戸田 弘子
禅仏教における自我形成援助方略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・吉田 昭久

定期総会 (西館会議室3)

10月27日(金)1:00p.m.~2:00p.m.
第17期運営委員会活動中間報告 05年度決算案06年度予算案 その他

総会討議 国家資格について(西館会議室3)

10月27日(金)2:00p.m.~3:30p.m.
話題提供者:宮脇 稔、佐藤和喜雄、亀口 公一(日本臨床心理学会運営委員)
遠く1960年代からあった臨床心理職の資格化の動きは、3つの大きな節目を経ています。一つ目は1960年代に当時あった心理学系6学会が「協会認定」の資格を作ろうとした動き。二つ目は1980年代終わり頃より、精神医療に関連した医学会や厚生省(当時)から、医療での心理スタッフの国家資格化の動きが生まれた動き。三つ目はここ1~2年の、国会議員を含めた心理職の国家資格法案作成の具体的な動きです。法案の提出には未だ至っていませんが、状況は緊迫し錯綜し不安定です。医療心理師国家資格制度推進協議会副会長の宮脇稔、日本心理学諸学会連合理事の佐藤和喜雄、日本心理学諸学会連合の国家資格小委員会ワーキンググループ委員の亀口公一から国家資格化の現状を語ってもらい、共に国家資格化問題を再度考えたいと思います。

自主企画I 「私」という病―臨床の現場から考え始めるー(西館会議室1)

10月27日(金)3:45p.m.~5:45p.m.
企   画:日本臨床心理学会関東委員会
話題提供者:小濱 義久(精神障害者共同作業所パオ)
栗原  毅(国立精神・神経センター国府台病院デイケア)
宮脇  稔(浅香山病院社会復帰施設「アンダンテ」)
近年「私」ということが強調されすぎて、そのために様々なひずみが生まれています。イラクで捕虜になった青年が「自己責任」を問われ、福祉現場では「自己決定」が強調され、臓器移植の領域では身体が「私」のモノのようにやりとりされています。心理臨床の核とも言うべき「理解」「共感」等の側面でも、社会的状況や「関係」ではなく、対象者の個人内心理を一方的に「理解」し、「共感」する傾向が強まっています。しかし、臨床現場で起こっていることは本当にそんなことなのでしょうかーそこから考え始めようと思っています。

自主企画Ⅱ グループホームとは何か-精神障害者グループホームに関する実態調査結果と実践報告を踏まえて-(西館会議室4)

話題提供者:高島 真澄(NPO茨城県精神障害地域ケアー研究会)
障害者の地域生活支援において、グループホームは重要な社会資源の一つとなっていますが、その生活は施設や入院時とほとんど変わらない所が多いのが現状です。そこで今年の夏に、当会は精神障害者のグループホームに関する実態調査を行いました。今回は、実態調査に協力参加のあったグループホーム関係者からの具体的な課題提起に基づき、当会の実態調査結果との照合を踏まえて、「グループホームとは何か」について皆さんと議論を深めていきたいと思います。

自主企画Ⅲ 障害者自立支援法を知ろう!-法制度と問題点―(西館会議室3)

話題提供者:藤本  豊(東京都立中部総合精神保健福祉センター)
佐藤和喜雄(福祉会菩提樹)
亀口 公一(乙訓若竹苑)
4月から自立支援法が施行されましたが、様々な問題が現場では噴出しています。金銭的負担が増えたことで生活がしにくくなっている現状があります。10月からの福祉サービスに関しても、障害程度区分認定のあり方やその手続きと費用負担等について、数々の疑問の声が出ています。
当日は、法の簡単な解説と問題点について藤本が、「知的障害」「精神障害」の領域での問題点について亀口・佐藤が発題し、参加者との意見交換を考えています。

分科会I 医療における心理支援を考える(西館会議室4)

10月28日(土) 9:30a.m.~12:30p.m.
シンポジスト:小西 紀一(京都大学)
坂後 恒久(福井県小児療育センター・福井大学教育実践総合センター)
森谷 就慶(東北文化学園大学)
精神疾患に限らず「病気」「けが」そして「障害」というものには、多かれ少なかれ心が関わり合っています。もっと正確に言えば、医療の場で繰り広げられる出来事には、あらゆる場面において、日常生活よりも深く心の問題が絡み合うものであるとも考えられます。この分科会では医療現場に限定して、心理的な要素が色濃くかかわる支援について、それぞれの立場から話題を提供してもらい、心理学的な考え方が医療現場に及ぼしている功罪について検討してみたいと思います。
心理学に詳しい作業療法士の小西さん、障害児療育の最前線で心理的な側面について常に配慮を持つ小児科医の坂後さん、精神科病院・精神科デイケアの勤務を経て福祉専門職養成において心理的な知識を教える大学教員の森谷さんからの話題提供を受けて、参加者のみなさんと意見交換を深めていきたいと考えています。
またこの分科会では、医療分野に心理職の国家資格化がなぜ必要か?ここ数年の間に各医学部で医療心理に関する講義と実習が急激に増えたのはなぜなのか?そして、実は古典的に医学心理学は確立されていたこと、など現代の医療と心理学を取り巻く様々な話題についても、可能な限り触れてみたいと思っています。

分科会Ⅱ 「DV・児童虐待」家族を見るまなざしを検証する(西館会議室3)

コーディネーター:井上摩耶子(ウィメンズカウンセリング京都)
シンポジスト:上野加代子(徳島大学) 吉村 智子(大阪樟蔭女子大学)
竹之下雅代(ウィメンズカウンセリング京都)
ドメスティックバイオレンス(以下、DV)・児童虐待は社会的問題と捉えられるようになり、児童虐待防止法やDV防止法などの一応の法整備もなされてきましたが、果たして被害者救済や防止予防の現状はどのようなものなのでしょうか?
本分科会では、三者三様のユニークな視点から「家族」を切り口にしながら、DV・児童虐待をラジカルに考えたいと思います。社会学者上野加代子さんは、「心理療法アプローチ」と「保険数理的なリスクアセスメント・アプローチ」から児童虐待問題を分析し、新たな家族統治について問題提起します。吉村智子さんは、障害者のQOLを研究中ですが、この面接調査から見えてきたアセスメント評価の問題、そして家族による成人障害者への虐待問題を考えます。竹之下雅代さんは、ジェンダーの視点から、ともすれば母親役割の不適切さという「母性」問題や被虐待児童の「発達障害」問題にすり替えられる傾向について、DV被害当事者の声を代弁します。
みなさまからの積極的参加・発言によるユニークな議論展開を期待しています。

全体会シンポジュウム 現代社会の心理主義化を問う(講義棟303D)

10月28日(土) 1:30p.m.~4:30p.m.
シンポジスト:浜田寿美男(奈良女子大学)
杉万 俊夫(京都大学)
實川 幹朗(姫路獨協大学)
近年アンチエイジングをキーワードとして、健康管理が注目されています。健康については、メタボリック症候群に象徴される「身体」の健康と、「うつ病」や「自殺」に代表される「心」の健康に分けて考えられています。そして「心の健康」が大切とされ、育児・教育・労働などの現場で「心理学」的な関わりの重要性が説かれています。また、「心」の動きを知ることで、虐待や子どもの関係する事件が防げるかのような錯覚を現代社会は持っています。そして、「心のノート」に象徴される「心の教育」の必要性が説かれ、「いい心」「健康な心」を作るための心理学や、「身体を鍛える」と同列に「心を強くする」ための心理学に期待が寄せられています。しかし、現代社会の複雑な「心」の問題を心理学のみでの解決が可能かは大きな疑問です。
本シンポジュウムではこの様な現在の心理学の流れを点検し、ノーマライゼーションの視点に立った「心理学的」支援についての発題を頂きます。姫路獨協大学の實川さんから思想史を通した心理学史の視点で、「子ども」や生活世界を大切にする心理学のあり方を考えてこられた奈良女子大の浜田さんから「一人ひとりが違っていい」といった視点で、また社会心理学的な立場から京都大学の杉万さんからの発題を受け、参加した皆さんとの討論をしたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください